現在の日本では牛、豚、鶏が多く飼育されており羊の飼育頭数は極めて少ないです。そんな羊がどのように日本に来て現在までどのように飼育されてきたかをここではご紹介します。
こんな人におすすめの記事です↓
・日本における羊の歴史を知りたい
・年代別の飼育頭数を知りたい |
野生羊から家畜羊へ
家畜としての羊の起源は約一万年前と言われていおり、家畜羊の先祖と見られる野生羊は、
アルガリ:中央アジア高原に生息
ムフロン:ヨーロッパ南部地方、地中海のサルジニア、コルシカ島に生息
ユリアル(草原種):トルキスタン地方からイラン、アフガニスタン、インド、パキスタンに生息
の3種とする説が有力です。
家畜化されて以来、長い年月をかけて人類が求める方向に改良が加えられ世界中の広い地域に分布し、現在10億頭以上が飼養されています。
日本の史料における羊の登場(飛鳥時代)
史料の中に羊が登場するのは日本書紀で、約1400年前の推古7(599)年に百済からの贈り物として初めて2頭の羊が日本にやってきたと記録されています。
その後も飼育されることはあったと考えられていますが、それ以降の史料の内容からすると羊と山羊※を混同して認識していた可能性があるとされています。その程度の認知ですから羊の飼育方法が定着しなかったようです。
※ 羊⇨基本的にはアゴヒゲがない 山羊→ツノとアゴヒゲがある
江戸時代以前は「山羊」の姿をしたものを「羊」として描かれることがあり、屏風や浮世絵に描かれた羊は「山羊」の姿をしていることが多いそうです。おもしろいですね。
羊飼育の定着(江戸末期〜明治時代)
江戸後期にようやく羊が正しく認知され始め、江戸末期には羊毛の試験的生産が始まり、明治になると本格的に羊の飼育と利用が始まりました。
明治以降は寒冷地や傾斜地の農業振興と、当時需要が高かった羊毛生産のために羊の飼育が奨励されました。
羊毛需要の高まり(大正〜昭和)
大正期から昭和20年(1945)にかけては軍の被服用羊毛の自給が飼育の目的となり、飼育者の羊毛利用が規制されるようになりました。
戦後は著しく衣料が不足し、国産羊毛に対する需要が増大したことを受けて羊毛価格が高騰して飼育熱が高まり、昭和32年(1957)には飼育頭数は約95万頭に達しました。
羊毛需要の減少(昭和後期)
しかしその後、羊毛の輸入自由化(昭和36年)や化学繊維の出現、社会情勢の変化等により、昭和51年(1976)には約1万頭にまで急減しました。
羊毛生産から羊肉生産へ(昭和晩期〜平成)
昭和40年代から飼養目的を羊肉生産へと転換し、主要な飼養品種も日本コリデール種から肉用種であるサフォーク種へと換わっていきました。
その後、水田転作の推進や地域活性化策として、またラム肉がヘルシーな食品として注目を浴びたことと、観光牧場への利用が盛んになったことなどにより、平成2年(1990)には飼養頭数が3万590頭までに回復します。
ジンギスカンブーム(平成〜)
平成晩期の第三次ブームとも言われる羊肉、とりわけジンギスカンへの需要が高まりました。しかし、主役であるラム肉・マトンは値段の安い輸入品に置き換わり、ひと頃のブームも去ったことで再び下り坂へと向かいます。
加えて国産羊肉が不足して母羊の更新が遅れるほか・繁殖用めん羊の高騰で規模拡大や新規飼育が難しい状況となってきています。
現在の飼育状況
現在日本で飼われている羊は、採毛種と合わせても約2万頭(2021)とされています。
しかしクセが少なく柔らかなラムの潜在的な関心は高く、フレンチやイタリアンレストランの店が増えたことで、高品質な国産羊肉に関心を持つシェフも多くなってきているそうです。
国産羊のおいしさを多くの人に知ってもらって羊産業が成長していくことを期待しています!
もちろん私たちもそのために一生懸命活動しますのでよろしくおねがいします!!
参考資料
- 「ヒツジの科学」(田中智夫 編集 朝倉書店 2015)
- 「めん羊・山羊 技術ハンドブック」(田中智夫・中西良孝 監修 畜産技術協会 2016)
- 「図解 知識ゼロからの畜産入門」(八木宏典 監修 家の光協会 2015)
- 「家畜取引の知識 改訂版」(一般社団法人 日本家畜商協会 編集 2020)
- 「奈良時代のヒツジの造形と日本史上の羊」(廣岡孝信 紀要『考古学論攷』第41号 2018)
- 「FAOSTAT」
- 「家畜の飼養に係る衛生管理の状況等の公表について」農林水産省消費・安全局動物衛生課