羊は古くから世界各国で品種改良が行われ現在1,000種以上の品種があるとされています。
ここではその一部をご紹介します。
※品種の起源については諸説あります。
こんな人に読んでほしい↓
・羊の品種を知りたい |
日本への導入
明治以降、羊毛生産を目的としてメリノやコリデールなど数多くの品種が輸入されました。その後、1995年以降には羊の飼養目的が羊毛から羊肉へと変わる中で、サウスダウンやロムニマーシュ、ボーダーレスターなどが輸入されましたが、どの品種も国内に定着することはなく、昭和40年代に本格的に輸入されるようになったサフォークがラム肉生産の主要品目となりました。さらに最近では、テクセルやポールドーセット、乳用種のフライスランドも輸入されていますが、現在もなお日本の主要品種がサフォークであり、全体の半数以上を占めています。
肉用種
羊肉の生産を目的に作られた品種
サフォーク(Suffolk)
経緯 | 在来種のノーフォークホーンにサウスダウンを交配して1810年に作出された |
原産地 | イングランド南東部のサフォーク州 |
体格 | 大型 雄 100〜135kg、雌 70〜100kg |
見た目 | 頭部と四肢に羊毛はなく、黒毛短毛に覆われている |
羊毛 | 比較的短く、弾力があり、布団綿やニードルフェルトの材料に適している |
特徴 | ノーフォークホーンの頑健性・多産性とサウスダウンの早熟性・早肥性を併せ持つ。強健で栄養価の低い飼料に耐え、繁殖力が強く、産仔率150%。子育てが巧み。 |
テクセル(Texel)
経緯 | 在来種にリンカーン、レスター、サウスダウンなどの英国長毛種を交配して1909年に作出された |
原産地 | オランダ |
体格 | やや大型 雄 120kg、雌 85kg |
見た目 | 雄雌共に無角で顔面と四肢の膝・飛節は白色短粗毛。他の部分は白色光沢の羊毛に被われて、耳や瞼に黒の斑が現れるものもある。黒い鼻先を持つ短くて広い箱型の顔が特徴である。四肢はやや短く太い。 |
羊毛 | 中品質の高密度のフリースを生産する。細いカーペットの糸、ニットウェア、フェルト、その他多くの工芸品に適する |
特徴 | モモの筋肉が非常に発達しており体長は短いが枝肉歩留まりが良い。早熟で3〜6ヶ月齢でラム肉(ミルクラム・スプリングラム)として使用できる。産肉性が良いため肉用の止め雄として活用されている。ニュージーランドでは本種とサフォークの交雑種も生産されている。粗飼料の利用性が高く、肉質に優れ繁殖力が強く、子育てが巧み。 |
サウスダウン(Southdown)
経緯 | 古くから飼育されていた小型の在来種から選抜育種されて作られた |
原産地 | イングランド南東部のサセックス州 |
体格 | 小型 雄 70〜100kg、雌 55〜70kg |
見た目 | 雌雄共に無角。丸く感じる顔面、耳、四肢は灰色から濃褐色 |
羊毛 | 緻密で品質良好 |
特徴 | 肉質は肉繊維が細くて風味があり、英国品種の中で最も良質で羊肉の王様とも言われている。骨が細く歩留まりが高い。体格は小型で地低(四肢が短い体型)、ロースが太くて背が平たく、窪地に転倒し、仰向けになると立ち上がれないことがある。 |
チュビオット(Cheviot)
経緯 | 在来山岳種に低地種の雄を交配して作られた |
原産地 | イングランドとスコットランドの境界チュビオット丘陵 |
体格 | やや小型 |
見た目 | 後頭部から顔及び膝、飛節以下が白色短毛で覆われ、無角 |
羊毛 | ツイードの原料に適している |
特徴 | 晩熟であるが体質強健、活発で粗飼料の利用性が高い |
リンカーン(Lincoln)
経緯 | 5000年以上前にイギリス、イーストアングリアのリンカンシャーで生まれた、最も古くから確立されているロングウールの品種の1つ。 |
原産地 | イギリス |
体格 | 大型 雄 120〜150 kg、雌 80〜110 kg |
見た目 | 大きくて丈夫な脚がある。前脚の小さな部分を除き全身が厚い羊毛で覆われている。白色または有色 |
羊毛 | 光沢のある長毛を生産する |
特徴 | 最大の品種といわれている。強健・温和。メリノ種が適さなかったレスターのような低農地の水域で使用されました。腐蹄症に対して高い耐性を持つ |
毛用種
羊毛の生産を目的に作られた品種
メリノ(Merino)
経緯 | もとはローマ時代にローマで作出された。その後スペインへ渡りスパニッシュ・メリノ、フランスでランプイエ・メリノ、南アフリカでケープ・メリノになり、その後アメリカン・メリノ、オーストラリアン・メリノなどがそれぞれ作出された。 |
原産地 | ローマ、スペイン |
体格 | 中型 スパニッシュ・メリノ:雄 30〜55 kg、雌 28〜55 kg オーストラリアン・メリノ:雄 60〜70 kg、雌 35〜70 kg ランプイエ・メリノ:雄 100〜115 kg、雌 75〜80 kg |
見た目 | 色は白く皮膚にヒダがある。角のあるタイプとないものの2種類がある |
羊毛 | すべての品種の中で最も細番手の羊毛を産する。上質でやわらかい |
特徴 | 順応性が高い |
毛肉兼用種
羊毛と羊肉の生産を目的に作られた品種
ポールドーセット(Poll Dorset)
経緯 | ドーセットホーンにライランドとコリデールを交配して作出された |
原産地 | オーストラリア |
体格 | 中型 雄 80〜93 kg、雌 60〜70 kg |
見た目 | 無角。脚は短いく長くて細い正方形の体格。ピンクの肌 |
羊毛 | 短くてスポンジ状。白色 |
特徴 | サフォークよりも多産で乳量も多い。オーストラリアではラム肉生産用のターミナルサイヤーとして多用されている。 |
コリデール(Corriedale)
経緯 | 19世紀後半ニュージーランドにおいてメリノ、リンカーン、レスター、ロムニー・マーシュなどの交配により兼用種として作出された |
原産地 | ニュージーランド |
体格 | 体格は大型で四肢は太く強健 雄80〜125kg、雌60〜80kg |
見た目 | 雄雌共に無角で額から顔面、鼻筋、下顎にかけて白色短粗毛に被われている他は、四肢から蹄まで、体躯は白い光沢のある羊毛に被われ鼻先は黒い |
羊毛 | 毛が長く良質 |
特徴 | 環境への適応性・飼料の利用性が高い。早熟・早肥で産肉性、肉質に優れている。繁殖力が強く、産仔率は150%、子育てが巧み |
乳用種
羊乳の生産を目的に作られた品種
フライスランド(Friesland)
経緯 | オランダのフライスランド地方原産で、イギリスで改良され1985年に成立した。 |
原産地 | イギリス |
体格 | やや大型 雄 100〜120 kg、雌 75〜85kg |
見た目 | 無角で後頭部から顔面までおよび膝・飛節上までが白色短粗毛で被われ、口唇と鼻腔は柔らかいピンク色を呈する。尾は薄くて羊毛がないため「ラットテール」と呼ばれる。 |
羊毛 | 羊毛は白色で光沢があり良質で、メリヤスや編み物用に多用される |
特徴 | ドイツで改良されたイーストフリージャンと混同される。産仔数が多いこともあり、雄は多産系雌羊に交配用の種雄として使用されることが多い。日本には1994年に飲用乳生産目的で導入された |
イーストフリージャン(East Friesian)
経緯 | 在来種を改良し、強健・骨格粗大・早熟多産で産乳量が多いものへと改良を進め、1901年に目的にあった本種が作出された |
原産地 | ドイツ西北部低地のイースト・フリージャン地方 |
体格 | 大型 雄100〜120kg、雌75〜85kg |
見た目 | 無角で後頭部から顔面までおよび膝・飛節上までと尾は白色短粗毛、そのほかの部位は白色で光沢のある羊毛に被われている。耳、瞼、鼻先に黒色の斑が現れるものもいる。口唇と鼻腔は柔らかいピンク色を呈する。尾は短い |
羊毛 | 白い。かさばる、中程度の粗さ |
特徴 | 仔率は225%と非常に高い |
アワシー(Awassi)
経緯 | 遊牧民の羊の品種として何世紀にもわたる自然の品種改良を通じて進化し、中東で最高の乳用種となった |
原産地 | 西アジアのシロアラビア砂漠(正確な起源は確立されていない) |
体格 | 中型 雄 60〜90kg、雌 30〜50kg |
見た目 | ファットテールタイプ(脂肪を蓄えた独特の大きな尾)で、頭と脚が茶色く羊毛は白い。耳は長く垂れ下がっている。雄は有角、雌は無角。頭は長くて狭く、輪郭は凸状 |
羊毛 | 長さにばらつきがある。カーペットに利用される |
特徴 | 中東諸国で最も普及している品種であり、サウジアラビアの北部では砂漠の条件下で飼育されている。極端な温度や不利な摂食条件に耐えることができ、乾季の栄養不足を脂肪の尾に蓄えられたエネルギーを利用することで補うことができる。 |
そのほか
マンクス・ロフタン(Manx Loaghtan)
経緯 | スコットランドやヘブリディーズ諸島、シェトランド諸島の至る所でかつて見られた原始的な羊の子孫 |
原産地 | イギリスの自治島であるマン島 |
体格 | 小型 雄 58 kg、雌 39 kg |
見た目 | 雄雌共に2〜4本の角を持ち、まれに6本角や無角のものも見られる。これは角芽を分割する遺伝子によるものである。 |
羊毛 | 褐色の羊毛を生産する |
特徴 | 肉は珍味とされ主に食用のために育てられているが、1970年代に絶滅の危機に瀕し、イギリス本土で増殖され、現在は希少品種保護団体によって保護されている。現在日本で飼育されているマンクス・ロフタンもこの団体から譲り受けたものであり、レア・シープ研究会のメンバーによって生体が維持されている。 |
参考資料
- 「ヒツジの科学」(田中智夫 編集 朝倉書店 2015)
- 「めん羊・山羊 技術ハンドブック」(田中智夫・中西良孝 監修 畜産技術協会 2016)